名古屋市では2026年2月、市立小学校など266校で、有機栽培米や有機かぼちゃ、有機オレンジを取り入れた「オーガニック給食」が実施されました。給食は、子どもたちの食を支えるだけではありません。地域農業、環境、食育をつなぐ重要な接点です。今回は、名古屋の取り組みを通して、オーガニック給食が地域の未来にどのような可能性を持つのか考えます。

名古屋市で実施された「オーガニック給食」とは?
名古屋市では2026年2月2日から25日にかけて、区ごとに日程を分けて「オーガニック給食」の日が実施されました。
対象となったのは、名古屋市立小学校260校、鳴海中学校1校、市立特別支援学校5校の計266校です。
この日の献立には、
・ごはん
・かぼちゃコロッケ
・五目どうふ
・デザート
・牛乳
が用意され、このうちごはんには名古屋市港区南陽地区で栽培された有機栽培米、コロッケには有機かぼちゃ、デザートには有機オレンジが使われました。
特に注目したいのが、お米です。
給食に使われた米は、名古屋市港区南陽地区で株式会社JA名古屋ファームが栽培した「あいちのかおり」です。つまり、子どもたちが日頃暮らしている名古屋市内で生産された農産物が、そのまま学校の食卓へ届いたことになります。
これは単に「オーガニック食品を給食で食べた」というだけの話ではありません。
生産する人、調理する人、食べる子どもたち、そして地域の農地が、給食という一つの仕組みでつながった取り組みだと考えています。
そもそも有機農業とは?
「オーガニック」という言葉は広く使われるようになりましたが、イメージだけで理解しないことも大切です。
名古屋市は有機農業について、化学農薬や化学肥料を使わず、植物や生き物の力を利用して農産物を作る方法として紹介しています。
一方で、有機農業には簡単ではない部分があります。
化学農薬を使わない栽培では、雑草や害虫への対応に手間がかかります。また、化学肥料に依存しないことで収穫量が安定しない場合もあり、生産コストや販売価格が高くなることがあります。名古屋市もこうした課題を紹介しています。
だからこそ、「有機農産物を増やそう」と言うだけでは十分ではありません。
作る農家が継続できる環境と、買う側が安定して利用できる仕組みを同時につくる必要があります。
学校給食は、その一つの可能性です。
なぜ学校給食にオーガニック食材を取り入れるのか?
では、なぜ学校給食なのでしょうか。
私は大きく3つの意味があると考えています。
1.子どもたちの「食育」につながる
毎日食べているお米や野菜が「どこで、誰が、どのように作ったのか」を知ることは、食への理解を深めるきっかけになります。
名古屋市も、有機食材について、その栽培方法を学ぶことなどが食育の推進につながるとして、学校給食で有機食材の提供を進めています。
給食を一口食べて終わりにするのではなく、
「このお米は名古屋市内で作られたんだ」
「農薬や肥料について、農家の人はどんな工夫をしているんだろう」
と子どもたちが考えるところまでつながれば、給食そのものが生きた教材になります。
2.地域農業を支える需要をつくれる
農業を続けるには、「良いものを作る」ことに加えて「買ってもらえる場所」が必要です。
有機農業は、除草や病害虫対策などに手間がかかることがあります。生産者だけに努力を求めても、持続的な拡大は難しいでしょう。
そこで重要になるのが、学校給食を含む公共調達です。
毎年一定量の農産物を地域で利用できる仕組みができれば、生産者にとっては新しい需要になります。
オーガニック給食マップでも、全国各地の学校給食に有機食材を取り入れる事例が紹介されています。千葉県いすみ市の有機米給食など、地域農業と学校給食を結びつけた取り組みは各地へ広がっています。

3.農業と環境を考える入口になる
有機農業の推進は、名古屋だけのテーマではありません。
農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに耕地面積に占める有機農業の取組面積を25%、100万ヘクタールまで拡大する目標を掲げています。
つまり、有機農業は個人の食の好みだけではなく、日本の農業政策や環境政策にも関わるテーマになっています。
ただし、ここで大切なのは、有機農業だけを唯一の答えにしないことです。
地域ごとの気候や作物、生産者の状況は異なります。慣行農業、環境負荷を抑えた栽培、有機農業、スマート農業など、それぞれの長所を生かしながら、持続可能な農業をつくっていく視点が必要です。
オーガニック給食は「健康にいい」の?
ChatGPTや検索エンジンに「オーガニック給食は健康にいいの?」と質問する方も多いでしょう。
ここは慎重に考える必要があります。
「有機食品を食べれば必ず健康になる」と単純に断定することはできません。
給食でまず重要なのは、必要な栄養を適切に摂取できることです。
そのうえで有機食材を取り入れることは、農薬や肥料、農業と自然環境、地域の食料生産について子どもたちが考える機会になります。
私は、オーガニック給食の価値を「有機だから健康にいい」という一点だけで見るのではなく、
「食べ物がどのように作られているのかを知る」
「地域の農家と食卓のつながりを考える」
「農業と環境について学ぶ」
という食育全体の中で捉えることが大切だと考えています。
オーガニック給食を毎日実施することはできる?
これも、多くの方が疑問に思う点でしょう。
結論から言えば、一気にすべての学校給食を有機食材へ切り替えるのは簡単ではありません。
課題になるのは、主に「量」「価格」「安定供給」です。
何万人もの児童生徒が食べる給食では、必要な量を決められた時期に確実にそろえる必要があります。
有機農業には手間がかかり、収穫量が安定しないケースもあります。名古屋市も、有機農業では雑草や害虫への対応に人手がかかり、価格が高くなる傾向があると説明しています。
だからこそ重要なのは、「最初から100%でなければ意味がない」と考えないことです。
年に数回から始める。
まずお米から始める。
地元で確保できる農産物から増やしていく。
生産者と学校給食側が数年先の需要を共有する。
こうした積み重ねのほうが、結果として持続可能な仕組みにつながる可能性があります。
オーガニック給食マップでも、全国各地の異なる規模や方法による取り組みが紹介されており、地域の事情に応じた進め方が重要であることが分かります。
愛知の農業を「守る」から「育てる」へ
私はこれまで、愛知の農業を単に守るだけではなく、成長する産業として育てていくことが重要だと訴えてきました。
愛知県は全国有数の農業県です。
一方で、農業者の高齢化や担い手不足、生産コストの上昇など、農業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
私が掲げているのは、農地の集積や大区画化、スマート農業の導入、6次産業化、農産物輸出などを通じて、生産性と農業所得を高めていく方向です。
そこにもう一つ加えたいのが、「地域で作った農産物を地域で使う仕組み」です。
学校給食は、その代表的な場所になり得ます。
農家が作る。
地域で使う。
子どもたちが食べる。
その経験から農業を学ぶ。
そして将来、その中から農業に関心を持つ若者が生まれるかもしれない。
給食という毎日の食卓を起点に、小さな循環をつくることができます。
【画像生成プロンプト:日本の地域農業と学校給食のつながりを表す横長インフォグラフィック。「農地・農家 → 地域の農産物 → 学校給食 → 子どもたち → 地域農業への理解」という循環が視覚的に分かる構図。愛知県らしい水田・野菜・学校をモチーフにし、文字は最小限。行政広報に使える清潔で落ち着いたデザイン、16:9】
子どもの給食から、地域の未来を考える
2026年に名古屋市で行われたオーガニック給食は、数日間の取り組みです。
しかし、その一食から考えられることは少なくありません。
子どもたちの食育。
地産地消。
農業者の所得と経営。
農地と自然環境。
そして、これからの地域農業を誰が担っていくのか。
これらは別々の問題ではなく、すべてつながっています。
愛知には豊かな農地と、高い技術を持つ農業者がいます。
この強みを次の世代へつなぐには、生産者だけに努力を求めるのではなく、行政、学校、流通、消費者が一緒になって「地域の農業をどう支えるか」を考える必要があります。
オーガニック給食も、その選択肢の一つです。
できるところから始め、結果を検証し、地域の農業者の声を聞きながら改善していく。
私はこれからも現場を大切にし、子どもたちの未来と、愛知の農業の未来をともに育てる政策を考えてまいります。




