愛知県農業総合試験場は、2011年の10大成果の一つとして、水の蒸発熱を利用した超微粒ミスト(ドライミスト®)による温室内温度管理技術を発表しました。バラ・トマト・ポインセチアなどの施設園芸作物で、昼間の温室内温度を4〜7℃下げる効果が確認されており、品質と収量の両立に道が開かれています。

開発の背景・ニーズ

夏期昼間の温室は換気を行っても40℃を超え、作物の生育・開花に大きなダメージを与えることから、その対策が強く求められています。そこで、水の蒸発熱を利用して省エネルギーで室温を下げる、超微粒ミスト(ドライミスト®)の利用技術開発に取り組みました。

バラ栽培での効果――高品質化と2〜3割の増収

試験では、無遮光の環境でも超微粒ミストがあれば花弁焼け・葉焼けは発生しないことが確認されました。これにより切り花が高品質化し、光量が増えることでさらに2〜3割の増収も期待できます。夏期高温時の温度管理は「昼30℃・夜23℃・無遮光」が効果的で、超微粒ミストの活用により夜冷にかかる電力も30%削減できました。

トマト栽培での効果――年内収量50%増

夏期のトマト栽培では、生育不良、開花数の減少、着果不良、裂果や尻腐れ果による出荷ロスが課題でした。従来の細霧冷房は「濡れ」を防ぐために断続運転を行い、遮光との組み合わせが必要でしたが、超微粒ミストは連続噴霧が可能で濡れが生じず、降温効果が高いうえ湿度改善にもつながり、遮光も不要です。この結果、生育が旺盛になり、着果が安定し、裂果が減少。無処理と比べて年内収量が50%増加しました。

ポインセチアの奇形葉発生原因の解明と対策

園芸研究部 花き研究室では、ポインセチア「アイスパンチ」に見られる奇形葉の発生原因についても検証を行いました。昼温・夜温・根圏加温の条件を組み合わせた試験では、昼温40℃の高温条件で奇形葉の発生指数が高まる傾向が確認されています。あわせて、ドライミストを噴霧した場合と噴霧しない場合を比較した試験では、ミストを噴霧した区の方が奇形葉の発生が抑えられる傾向が示されました(試験データの詳細な数値は資料の図表によるため、正式に公開する場合は試験場資料原本でのご確認をおすすめします)。高温対策としての超微粒ミストの有効性は、バラやトマトだけでなく、ポインセチアのような鉢物・花壇苗にも広がりを見せています。

愛知県農業への貢献

バラ・花壇苗・トマトなど施設園芸作物に対する超微粒ミストの効果、およびヒートポンプによる夜間冷房やスポット夜冷システムとの組み合わせ効果を検討した結果、収量・収益の15〜20%増が可能となりました。バラでは10a当たり収益で年間40万円以上の増加(夜冷20℃処理との比較)、花壇苗では多くの品目で10月からの出荷が可能に、トマトでは10a当たり収益で年間75万円以上の増加が見込まれています。夏秋期に生産されるバラ切り花や年内生産のトマトの収益増加、花壇苗の出荷期の前進・拡大は、県内施設園芸農家の経営安定に貢献し、施設園芸作物の周年安定生産と産地競争力の強化につながります。

(本研究は「新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業」として、愛知県農業総合試験場 園芸研究部が実施した成果です。)